運送保険・引越し保険とは?補償対象や加入方法を解説

運送保険・引越し保険とは?補償対象や加入方法を解説

引越し作業中に起きるトラブルとして多いのが、家具や家電の破損、荷物の紛失といった損害です。引越し業者に依頼していても、すべてのトラブルが自動的に補償されるわけではありません

補償を受けるためには、補償内容の仕組みと申請手続きの流れを理解し、適切に対応することが重要です。ここでは、引越し中に発生した損傷や紛失に対する補償の内容、申請の手順、注意点を詳しく解説します。

1. 引越し中の損傷・紛失に対する主な補償制度

標準引越運送約款による補償

  • 国土交通省が定める「標準引越運送約款」に基づき、引越し業者は運搬中の荷物損傷・紛失に対して賠償責任を負う
  • 損害が発生した場合、引渡しから3か月以内に申し出れば補償を受けることが可能
  • 補償金額は再調達価額(同等品の購入価格)または修理費を基準に算定される

運送業者貨物賠償責任保険

  • 多くの引越し業者が加入している保険で、業者の過失による損害を補償
  • 家具や家電の破損・紛失などが対象
  • 補償上限は業者によって異なり、100万円~1000万円程度が一般的

任意の引越荷物保険

  • 依頼主が任意で加入できる保険
  • 標準補償ではカバーされない自然災害・盗難・偶発的損傷にも対応する場合がある
  • 高価な家具や精密機器がある場合に加入を検討すると安心

【補償されない主なケース】

  • 依頼主の梱包不備や取り扱いミスによる損傷
  • 自然災害(地震・台風・津波など)が原因の場合
  • 経年劣化や材質変化による損傷(塗装の剥がれ、日焼けなど)
  • 現金・貴金属・有価証券・美術品・骨董品などの特別高価品
  • 通知期限(3か月)を過ぎて報告した場合
 

損害が業者の過失ではなく、不可抗力と判断される場合も補償の対象外となることがあります。

2. 補償請求の手続きの流れ

1. 損傷や紛失を確認したらすぐに連絡

  • 荷物の破損や紛失を見つけたら、できるだけその場で業者に報告
  • 作業員がいる場合は現場で確認してもらい、口頭ではなく記録を残す
  • 写真を撮影し、損傷の状況を明確にしておく

2. 業者への正式な報告

  • 引越し完了後に損傷を発見した場合は、引渡し日から3か月以内に業者へ通知
  • 電話だけでなく、メールや書面など記録が残る形で報告する

3. 必要書類の提出

業者または保険会社から補償申請のための書類が提供されます。一般的に以下の書類が必要です。

  • 損害賠償請求書(所定の申請用紙)
  • 損害品の写真
  • 購入時の領収書・保証書など(購入価格の証明)
  • 修理見積書または修理不能証明書
  • 事故発生状況の報告書

4. 調査・査定

  • 業者または保険会社が損傷の程度や原因を確認
  • 修理可能な場合は修理費用を、修理不能な場合は再調達価額を基準に補償金額を算定

5. 補償金の支払い

  • 調査結果に基づき、補償金が支払われる
  • 修理後の再確認や、代替品提供での対応となる場合もある

【注意すべきポイント】

  • 補償申請はできるだけ早く行う
  • 状況証拠を残す
  • 見積もり段階で補償内容を確認
  • トラブルが解決しない場合

【補償金が減額・拒否される主なケース】

  • 通知が遅れた、または報告が曖昧で証拠が不十分
  • 梱包不足や扱い不注意など、依頼主側に原因があると判断された場合
  • 修理見積額が実際の再調達価格を上回る場合
  • 高価品を事前申告せずに運搬した場合
  • 保険契約外の損傷(自然劣化や経年変化など)

【申請前に確認しておくべきこと】

  • 損傷品の状態をそのまま保管する(修理・廃棄は申請後)
  • 保証書・レシートなどの購入証明を準備しておく
  • 補償金は「修理費」または「減価償却後の再調達価格」で計算される
  • 書面でのやり取りを基本とし、すべての報告内容を記録に残す

補償申請はできるだけ早く行う

引越しの際に荷物の破損や紛失が発生した場合、多くの人が「後で業者に連絡すれば大丈夫」と考えがちです。

しかし、補償の申請には明確な期限があり、連絡が遅れると補償を受けられなくなる可能性があります。

また、時間が経つほど損傷の原因や責任の所在を証明しにくくなるため、迅速な報告と申請が何よりも大切です。ここでは、補償申請を早く行うべき理由、期限、実際の対応手順を詳しく解説します。

1. 補償申請の基本ルール

引越しの補償申請は、「標準引越運送約款(国土交通省制定)」に基づいて処理されます。この約款では、引越し業者に対して損害賠償を求める際の申告期限が明確に定められています。

標準約款の規定

  • 荷物の引渡し日から 3か月以内 に業者へ通知することが必要
  • 3か月を過ぎると、業者は補償の責任を負わない場合がある
  • 通知の方法は、口頭よりも書面(メール・FAX・報告書) が望ましい
 

補償を受けるためには「できるだけ早く」「証拠を残す形で」報告することが重要です。

2. なぜ早期申請が大切なのか

証拠が失われる

  • 時間が経つと、破損箇所や原因を正確に立証しづらくなる
  • 搬入後に使用した痕跡がつくと、「引越し時の損傷かどうか」が不明確になる
  • 写真撮影や現場確認が遅れると、業者側の調査も困難になる

業者側の責任が限定される

  • 業者は引渡し完了後の一定期間内のみ、法的に賠償責任を負う
  • 3か月を過ぎると「通常の使用中に発生した損傷」と判断されることがある

補償金の支払いが遅れる

  • 早期に報告すれば、業者と保険会社の確認・査定がスムーズに進む
  • 報告が遅れると調査や書類提出に時間がかかり、支払いまで数週間〜数か月遅れる場合がある

【申請までの実践的ステップ】

1. 損傷を発見した時点で写真を撮る
  • 破損箇所・設置場所・梱包状態を複数の角度から撮影
  • 箱の外観やテープの状態も記録すると原因特定に役立つ
2. 当日中に業者へ連絡
  • 損傷や紛失が分かったら、できるだけ当日中に業者へ報告
  • 作業員がまだ現場にいる場合は、その場で確認してもらう
  • 電話連絡だけでなく、後で証拠として残せるようメールまたはLINEでも報告
3. 書面による正式な通知
  • 写真・説明を添えて「損害報告書」を提出する
  • 業者によっては専用フォームや申請書が用意されている
  • 書面に残すことで、後日のトラブル防止に繋がる
4. 証拠の保全
  • 壊れた物をすぐに捨てたり修理したりせず、そのままの状態で保管
  • 修理見積書や購入証明(領収書・保証書)も補償申請に必要になる

3. 通知期限を過ぎた場合のリスク

  • 標準約款の期限(3か月)を超えると、補償請求が原則として無効になる
  • 業者が任意で対応する場合もあるが、法律上の義務はなくなる
  • 遅延報告の場合、補償額の減額や調査拒否が行われることもある
 

特に高額家電や精密機器の損傷は、時間が経過するほど「通常使用による故障」と見なされやすくなります。

4. 早期申請のためにやっておくべき事前対策

  • 引越し前に、貴重品・壊れやすい品は写真撮影しておく
  • 梱包前に「現状の傷」や「動作状態」を記録しておく
  • 契約書に記載されている補償内容・通知期限を必ず確認
  • 業者の受付窓口(電話・メール・申請フォーム)を控えておく
  • 新居で荷物を開封する際は、破損チェックを引越し翌日までに終える

【早く報告した方が良い典型的なケース】

  • 家具の角が欠けていた、塗装が剥がれた
  • 冷蔵庫や洗濯機などの家電が作動しない
  • ダンボールが潰れて中身が破損していた
  • 荷物が一部届いていない、数が合わない
  • 精密機器(テレビ、PCなど)の画面が割れていた

これらは「引越し作業中に起きやすい損傷」であり、すぐ報告すれば補償されやすい代表例です。

早期申請での対応例

例:引越し翌日に冷蔵庫が故障した場合

  1. 故障状況をスマートフォンで撮影
  2. 当日中に引越し業者へメールで連絡(写真添付)
  3. 翌日に業者立ち会いで現物確認
  4. 修理見積書を提出
  5. 約2週間後に修理費用が補償として支払われる

このように、迅速に報告すれば調査・対応・補償がスムーズに進みます。

状況証拠を残す

引越し中に起きた家具や家電の破損、荷物の紛失などのトラブルでは、「いつ」「どこで」「どのように」損傷が発生したかを証明できるかどうかが、補償を受けられるかの分かれ目です。

そのため、口頭での報告だけではなく、写真・動画・書面などの「状況証拠」を残すことが非常に重要です。

ここでは、補償申請を有利に進めるために押さえておきたい「状況証拠の残し方」と「実務での活用方法」を詳しく解説します。

1. なぜ状況証拠が必要なのか

補償を受ける際、引越し業者は「損傷の原因が自社の作業に起因するかどうか」を調査します。この際に必要となるのが、依頼主が残した客観的な記録(状況証拠)です。

  • 時間が経つと、損傷がいつ起きたのか判断しづらくなる
  • 使用後に発見された場合、使用中の破損と区別がつかなくなる
  • 言葉だけでは業者側の過失を証明できない

そのため、引越し当日〜翌日までに証拠を確保することが原則です。

2. 証拠として有効なもの

補償申請で有効とされる証拠は、以下の4種類に分類されます。

写真(静止画)

  • 最も重要な証拠
  • 損傷箇所・破損した位置・荷物の置かれた状態を撮影
  • 作業中の様子や梱包材の破れも記録しておくと有効
  • 複数の角度・距離から撮る(全体→部分の順)
  • 家具の角が欠けた場合:破片・欠けた部位・設置場所を撮影
  • 家電が壊れた場合:外観、配線、設置後の周囲の状況を撮影

動画(映像記録)

  • 運搬時の状況や作業員の扱い方が確認できると、原因特定に役立つ
  • ダンボールの搬入順序や取扱いの様子を記録しておくのも有効
  • 特に大型家電・高級家具などは、引越し前から動画を撮っておくと後々のトラブル防止になる

書面(報告記録)

  • 業者への報告内容をメールやLINEなどの記録が残る方法で残す
  • 日時・内容・担当者名を記載しておくと、時系列を整理しやすい
  • 「損傷がいつ発見されたか」「どの部分か」を明記しておく
例文(メール報告例)

件名:引越し後の家具破損について
本日(○月○日)の搬入作業後、リビングの棚の角部分に破損を確認しました。添付写真をご確認ください。ご対応方法についてご連絡をお願いいたします。
氏名・住所・作業日・担当者名

購入・修理に関する資料

  • 保証書・領収書・見積書など、金額を示す証拠も重要
  • 「修理費の相場」「購入金額の証明」に使用される

3. 撮影・記録のタイミング

状況証拠は「いつ撮るか」「どの段階で残すか」が鍵となります。

タイミング 撮影・記録しておくポイント
引越し前 家具・家電の外観(傷がない状態)を撮影しておく
引越し当日 作業中の様子・搬出時の養生・運搬経路を撮影
搬入直後 設置後すぐの状態を確認・撮影
損傷発見時 破損箇所・位置・床や壁の痕跡などを撮影
報告時 写真・動画を添付して業者へメール報告

4. 証拠の保存方法と注意点

保存の基本

  • スマートフォン・クラウド・PCなど複数の場所にバックアップ
  • ファイル名に日時と内容を入れる(例:「2025-03-10_冷蔵庫_ドア傷.jpg」)
  • メール送信履歴・LINE履歴も削除せず保存

【撮影時の注意点】

  • ピントを合わせて明るく撮る(ぼやけた写真は無効)
  • 対象物と周囲(床・壁など)が一緒に写るように撮る
  • フラッシュで反射する場合は角度を変えて複数枚撮影

書面での控え

  • 報告メールのコピーや印刷を残す
  • 書面で業者の署名・日付入り確認書を受け取ると確実
状況証拠が有効に使われる具体例

事例1:冷蔵庫のへこみ

  • 搬入直後にドア表面のへこみを発見
  • 引越し前の写真では傷がないことを確認
  • 当日撮影した写真・搬入経路・メール報告を提出→ 業者の過失と認定され、修理費全額補償

事例2:テレビの画面割れ

  • 搬入翌日にテレビを起動したところ画面が割れていた
  • 搬入時の映像で、作業員がテレビを横倒しにしていたことが判明→ 証拠動画により、業者側の過失として補償対応

事例3:紛失トラブル

  • ダンボールの搬入数を記録していたメモが証拠となり、紛失を立証→ 業者のミスが認められ、同等品購入費が支払われた

5. 証拠が不十分な場合に起こる問題

  • 「いつ壊れたのか」が曖昧になり、業者の過失を証明できない
  • 損傷が使用後と判断され、補償対象外になる
  • 口頭のみの報告では記録が残らず、トラブルが長期化する
  • 補償申請が遅れ、期限切れ(3か月)で却下される可能性

6. 状況証拠を残すためのチェックリスト

チェック項目 内容
損傷品の写真を撮影したか 複数角度・明るい環境で撮影
搬出・搬入の様子を記録したか 養生・運搬経路を確認
損傷発見日時を記録したか メモまたはメールで残す
業者への報告を証拠として残したか メール・LINEなどで送信履歴保存
修理見積・領収書を保管しているか 提出時に金額の裏付けとして使用

【早期報告と証拠保全の組み合わせが最強】

「損傷に気づいたらすぐ報告」+「証拠を残す」この2つを徹底することで、ほとんどの補償トラブルは円滑に解決します。

業者に過失があったことを客観的に示すためには、“状況証拠”の質と鮮度が最も重要です。

見積もり段階で補償内容を確認

引越しの見積もりを取るとき、多くの人は「料金」「作業内容」「日時」だけに目を向けがちです。しかし、実はそれ以上に大切なのが補償内容の確認です。

引越し作業中に家具が傷ついたり、家電が壊れたり、荷物が紛失するトラブルは決して珍しくありません。

契約後に「補償の対象外だった」と気づいても手遅れになるため、見積もりの段階でしっかり確認しておくことが必要です。

1. なぜ見積もり段階で確認が必要なのか

契約後では補償条件を変更できない

引越し契約は、見積もり書の内容に基づいて正式に成立します。そのため、契約後に「補償を追加したい」「条件を変えたい」と申し出ても、多くの業者では契約内容の変更や保険の追加ができません。

補償範囲が業者ごとに違う

標準引越運送約款に基づく補償が基本ですが、実際には業者によって「補償限度額」「対象範囲」「対応方法」が異なります。

たとえば同じ家具の破損でも、ある業者は修理費全額を補償、別の業者は減価償却を適用して一部のみ支払い、という違いがあります。

トラブルの大半は「補償の認識違い」から発生

引越し後のトラブル相談で多いのは、「壊れたのに補償してもらえなかった」「補償の上限が低かった」というケースです。こうしたトラブルの多くは、契約前に補償内容を確認していなかったことが原因です。

2. 見積もり時に必ず確認すべき補償の項目

以下の項目を営業担当者に直接確認し、見積書や契約書に明記してもらうのが理想です。

1. 補償の上限額

  • 家具・家電・荷物1点あたりの補償上限
  • 1件あたり(引越し全体)の補償上限
  • 高額品(ピアノ・ブランド家具・精密機器など)の補償扱い

・1点につき最大30万円まで補償・全体で300万円まで補償

この金額を超えるもの(高級家具・美術品など)は、事前に「高額申告」が必要になる場合があります。

2. 補償の対象範囲

  • 損傷(破損・へこみ・キズなど)
  • 紛失・盗難
  • 家屋(床・壁・ドア枠など)の損傷
  • 雨濡れや水濡れなどの事故
  • 運搬中の家電の故障(冷蔵庫・洗濯機など)
 

業者によっては「家屋損傷は対象外」「自然災害は除外」としている場合もあるため、どこまで補償されるかを明確にしておきましょう。

【補償の対象外となるケース】

  • 経年劣化やもともとのキズ
  • 梱包不備(依頼主が自分で梱包したもの)
  • 自然災害による破損
  • 高額品・貴重品(現金・宝石・美術品など)
  • 申告漏れの荷物

これらは多くの業者で共通して「補償対象外」とされています。依頼主が自分で梱包する「節約プラン」を選んだ場合、その箱の中身は補償対象外になることがあるため特に注意が必要です。

4. 保険加入の有無

  • 業者が加入している「運送業者貨物賠償責任保険」の内容
  • 任意加入できる「引越荷物保険」の有無
  • 保険会社・補償金額・自己負担額の有無
 

特に高価な家具や精密機器を運ぶ場合、任意の引越荷物保険に加入することでより確実な補償が受けられます。

5. 申請手続きの方法

  • 破損が起きた場合の連絡先(担当部署・電話・メール)
  • 申請期限(引渡し後何日以内か)
  • 必要書類(写真・領収書・修理見積書など)
 

申請手続きが複雑な業者もあるため、あらかじめ手順を確認しておくとスムーズです。

営業担当者への具体的な質問例

見積もり時には、以下のような質問をすると効果的です。

  • 「補償は標準約款に基づいていますか?」
  • 「補償上限額はいくらですか?」
  • 「私が自分で梱包した箱の中身も補償されますか?」
  • 「家屋の壁や床にキズがついた場合も対応してもらえますか?」
  • 「保険に加入している場合、その保険内容を見せてもらえますか?」
 

営業担当者が曖昧な回答をする場合は、必ず書面で確認を依頼しましょう。

【書面で確認・記録を残すことが大切】

  • 見積書や契約書に「補償条件」「上限金額」を明記してもらう
  • 口頭で説明された内容は、後日メールなどで再確認
  • 「補償内容に関する確認事項」として書面を保管しておく
 

引越し後にトラブルが発生した際、「契約時に補償の説明を受けていない」という申し出は証明が難しいため、書面で残すことが最も確実な防衛策です。

3. 業者ごとの違いを比較する

引越し業者を比較する際は、「料金の安さ」だけで選ぶのではなく、補償内容を比較対象に含めることが重要です。

項目 業者A 業者B
家具破損の補償上限 30万円 10万円
家屋損傷への対応 あり 対象外
紛失時の補償 実費補償 修理不能のみ
保険加入 あり(貨物賠償保険) 未加入
任意保険の追加 可能 不可

このように、補償内容は業者ごとに大きく異なるため、「安さ」よりも「補償の手厚さ」で選ぶことが結果的に安心につながります。

4. チェックリスト(契約前の確認項目)

確認項目 チェック
補償上限額を聞いたか
補償対象(損傷・紛失・家屋)を確認したか
対象外となるケースを理解したか
保険加入の有無を確認したか
申請手続きの方法と期限を把握したか
書面で補償内容を明記してもらったか

トラブルが解決しない場合

引越しの際、家具や家電の破損、荷物の紛失、壁や床の傷などのトラブルが発生した場合、多くは引越し業者との話し合い(示談)で解決します。

しかし中には、業者が補償を認めない、対応が遅い、連絡が取れないなど、スムーズに進まないケースもあります。

そのようなときは、冷静に証拠を整理し、正しい手順で第三者機関に相談・申立てを行うことが大切です。ここでは、トラブルが解決しない場合の対応方法を具体的に解説します。

1. まず行うべき初期対応

1.1 記録を整理する

トラブルが起きたら、まず事実関係を明確にすることが第一歩です。以下の項目を時系列で整理しましょう。

  • 破損・紛失が発生した日時と状況
  • 業者とのやり取りの内容(口頭・メール・LINEなど)
  • 損傷箇所の写真・動画
  • 修理見積書、購入時の領収書などの資料
  • 担当者名・連絡日時・回答内容

これらを整理しておくことで、業者・保険会社・相談機関への説明がスムーズになります。

1.2 書面で正式に申し出る

口頭での抗議では記録が残らないため、書面(メール・FAX・郵送)で正式に申請しましょう。

記載すべき内容例
  • 契約者名・住所・電話番号
  • 引越し実施日・業者名・担当者名
  • 発生した損害の内容(例:家具の脚の破損、家電の故障など)
  • 写真添付と修理見積額
  • 返答期限の設定(例:「〇日までにご回答をお願いします」)
 

業者側が誠実に対応するかどうかを確認する上でも、書面での通知は非常に有効です。

2. 業者の対応が不誠実な場合の対処法

2.1 担当者を変えてもらう

対応が遅い・誠実でない場合は、営業担当者ではなく本社の「お客様相談窓口」や「品質管理部」に直接連絡します。現場担当者が判断できない補償案件でも、上層部署にエスカレーションすることで進展することがあります。

2.2 書面での回答を求める

「対応できない」「補償対象外」と言われた場合は、その理由を文書で明示してもらいましょう。書面があれば、その内容を第三者機関へ提出できます。逆に、文書を拒む業者は法的根拠が不十分である場合が多いです。

2.3 内容証明郵便を送る(最終手段)

業者がまったく対応しない、連絡を無視する場合は、内容証明郵便で正式に補償請求を行います。

内容証明に記載する基本内容
  • 契約内容と引越し日
  • 被害の詳細
  • 補償請求の根拠(標準引越運送約款 第21条 等)
  • 回答期限
  • 期日までに対応がない場合の今後の措置(第三者機関への相談や法的手続き)
 

内容証明郵便を送ることで、業者側も法的責任を意識し、交渉が進むケースが多いです。

3. 第三者機関への相談・申立て

業者との交渉で解決しない場合は、中立的な第三者機関に相談できます。これらの機関は、無料で相談・調整を行ってくれる場合が多く、法的知識がなくても利用可能です。

3.1 消費生活センター(全国共通)

  • 電話番号:188(「いやや」で覚える)
  • 各自治体に設置されており、消費者トラブル全般を扱う
  • 業者との交渉方法の助言や、必要に応じて業者への連絡・調整も可能
 
  • 相談は無料
  • トラブル内容を具体的に伝える(契約書・写真・メール記録を持参)
  • 業者が全国展開している場合でも、地域のセンターから連携して対応してくれる

3.2 国民生活センター(消費者庁管轄)

  • 消費生活センターで解決しない場合に相談を引き継いでくれる
  • 複数地域にまたがる大手業者のトラブル対応が中心
  • 「ADR(裁判外紛争解決手続き)」という中立的な調停手続きを利用できる場合もある

3.3 公益社団法人 日本引越サービス協会(JLSA)

  • 協会加盟業者に対しての苦情・紛争調整を受け付けている
  • 会員業者であれば、協会が間に入りトラブル解決を支援
  • 引越し業界の専門知識を持つため、現実的な調整が期待できる

問い合わせ先は見積書または業者公式サイトで確認可能。

3.4 弁護士への相談(法的措置を検討する場合)

  • 修理費や補償額が高額(10万円以上)で、示談が難しい場合
  • 内容証明郵便でも業者が無反応な場合
  • 時効(3か月以上経過)や因果関係で争いがある場合

この場合、弁護士相談(30分5,000円程度)や法テラス(無料法律相談)を利用するのがおすすめです。

4. 相談前に準備しておくべき資料

第三者機関に相談する際は、以下の資料を揃えておくとスムーズです。

資料 内容
契約書・見積書 契約内容・金額・引越日などを確認するため
写真・動画 損傷や荷物の状態を証明するため
業者とのやり取り記録 メール・LINE・通話メモなど
修理見積書・領収書 損害額を算出するため
補償申請書類 提出済みの書類や業者からの回答文書

【相談・調停・裁判の流れ(一般的な手順)】

  1. 業者に正式請求(書面で)
  2. 消費生活センターなどに相談
  3. 調停・あっせん(第三者機関が間に入る)
  4. 示談成立 or 不成立
  5. 不成立の場合、民事訴訟(少額訴訟含む)

小額の損害(10万円以下)であれば、少額訴訟制度(簡易裁判所)を利用できます。書類を自分で用意でき、費用も比較的安く済みます。

【トラブルを悪化させないための注意点】

  • 感情的にならず、冷静に記録・証拠を集める
  • SNSなどで業者名を公開・中傷するのは避ける(名誉毀損の恐れあり)
  • 必ず公的な機関を通じて解決を図る
  • 書面のやり取りを中心に行い、すべての記録を保管する

5. チェックリスト(トラブル解決に向けて)

項目 実施状況
証拠を整理した(写真・メール・領収書)
書面で正式に請求した
本社・相談窓口にエスカレーションした
内容証明郵便を送付した
消費生活センターに相談した
弁護士・法テラスへの相談を検討した
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