引越し業者のプランを比較すると、よく目にするのが「フルサービス」や「おまかせプラン」といった表現です。
しかし、この“フルサービス”という言葉には統一された定義がなく、業者によってサービス内容が大きく異なるのが実情です。
どこまで業者に任せられるのか、事前に把握しておかないと「思っていたより自分でやることが多かった」ということにもなりかねません。
ここでは、フルサービスの一般的な内容と、業者ごとの違い・注意点を詳しく解説します。
フルサービスとは?
フルサービスとは、引越しに関わる作業を業者がほぼすべて代行してくれるプランのことを指します。
通常、自分で行うことが多い荷造りや荷解きなども、スタッフがすべて行ってくれるのが特徴です。一般的には以下のような作業を含むケースが多くなっています。
- 荷造り(衣類・食器・雑貨などの梱包)
- 家具・家電の養生と搬出
- 輸送・トラック移動
- 新居での搬入・設置・家具配置
- 荷解きと片付け
- ダンボールや梱包材の回収
ただし、これらの内容がすべての業者に共通しているわけではありません。
含まれないことが多い作業
フルサービスといっても、以下のような作業はオプション扱いまたは対象外になることが多くあります。
- 貴重品や現金、美術品、ペットなどの運搬
- 不用品処分やハウスクリーニング
- 荷物の一時預かり・トランクルーム利用
- 家電設置やリサイクル品の引取り
- ライフライン・ネット回線の手続き代行
このような項目は業者によって「別料金」「対応不可」など条件が異なるため、見積もり時に明確に確認しておくことが重要です。
業者ごとの違い
同じ「フルサービス」でも、業者によってプランの呼び方や範囲が異なります。代表的な違いを見てみましょう。
- サカイ引越センター:「まるごとおまかせフルサービスプラン」
→ 荷造りから荷解きまで全て対応。家具の配置まで任せられる。 - アート引越センター:「おまかせパック(ハーフ/フル)」
→ ハーフは荷造りのみ代行、フルは荷造り+荷解きの両方をカバー。 - 日本通運:「フルプラン」
→ 食器や衣類の梱包・開梱を含む。資材の提供や片付けも対応可能。
このように、「フルサービス」という言葉の中身は業者によって微妙に違うため、同じ名称でも“どの工程まで対応してくれるか”を具体的に確認することが大切です。
フルサービスの料金と特徴
- 一般的に、自分で荷造り・荷解きを行うプランに比べて 2~3割ほど高額 になる傾向があります。
- 繁忙期(3〜4月)や荷物量が多い場合は、さらに料金が上がることもあります。
- ただし、荷造り・片付けの時間を短縮でき、忙しい人や小さな子どもがいる家庭、高齢者世帯などには特に便利です。
- ハーフプランやセミおまかせプランなど、負担と費用のバランスを取る選択肢もあります。
【依頼前に確認すべきポイント】
フルサービスを検討する際は、以下の項目を事前にチェックしておきましょう。
- サービス範囲(荷造り・荷解き・家具配置など)の明確化
- 追加料金の発生条件(大型家電・特殊荷物・距離など)
- 梱包資材の有無と料金
- ダンボールの回収や清掃サービスの有無
- 補償・保険の範囲(破損・紛失時の対応)
これらを確認しておくことで、契約後の「聞いていなかった」「想定外の請求があった」といったトラブルを防げます。
【注意点と選び方のコツ】
- 「フルサービス」という言葉に惑わされず、作業範囲を一つずつ確認すること
- “荷造りだけ業者”か、“荷造り+荷解き”まで任せられるかの違いを見極めること
- 家族構成や時間の余裕に応じて、完全おまかせか部分的なサポートかを選ぶこと
- 費用よりも「安心感」「仕上がり」「作業品質」を重視したい場合に適している
目次
サービス範囲(荷造り・荷解き・家具配置など)の明確化
「フルサービス」と聞くと、“全部やってくれる”という印象を持つ人が多いですが、実際には業者によって対応範囲が異なります。
特に「荷造り」「荷解き」「家具配置」などは、プランによって含まれる・含まれないが分かれるポイントです。
契約前にどこまで業者が担当してくれるのかを明確にしておくことで、想定外の作業や費用トラブルを防ぐことができます。ここでは、具体的な作業範囲と確認すべきチェックポイントを詳しく解説します。
荷造り(梱包)サービスの範囲
引越しの第一工程である荷造りは、業者によって対応範囲に大きな差があります。
- 小物類の梱包:衣類・食器・本・日用品などをスタッフが箱詰めしてくれるか
- 大型家具・家電の養生:冷蔵庫やテレビなどの保護・分解を行ってくれるか
- 資材の提供:ダンボールやテープを無料で支給してくれるか、または有料か
- 対象外となる荷物:貴重品や現金、壊れやすい品は自分で梱包する必要があるか
この作業範囲が曖昧なままだと、「小物は自分で詰めてください」といった食い違いが生じやすいため、必ず事前確認が必要です。
搬出・輸送・搬入の確認
基本的な作業である搬出・搬入・輸送も、実は業者によって細部の対応が異なります。
- 旧居・新居の養生:壁・床・ドアなどを保護するか
- 階段・エレベーター利用時の追加料金:特にマンションでは確認が必須
- 長距離・離島・夜間などの特殊条件:追加費用が発生するか
- 家具の取り扱い方:解体や分解が必要な家具を扱ってもらえるか
こうした細部の扱いを確認せず契約すると、搬出時に「想定外の追加費用」が発生するケースもあります。
荷解き・片付けの範囲
新居での荷解きサービスは、フルサービスの中でも“本当に全部任せたい人”が注目すべき部分です。
- どこまで開梱してもらえるか:箱から出すだけか、収納・整理まで行うか
- 家具の設置:新居での家具・家電の配置を依頼できるか
- ダンボール回収サービス:開梱後に不要になった資材を回収してくれるか
- 日用品のセッティング:食器棚やクローゼットなどへの収納を行うか
特に「箱から出すだけで、整理は自分で」というケースも多いため、“開梱・配置・収納”のどこまで含まれているかを明確にしましょう。
家具・家電の配置・設置
家具や家電の設置対応は、プランの中でも差が大きい項目です。
- 家具の配置:指定の部屋・位置に設置してくれるか
- 家電の設置:洗濯機・冷蔵庫・テレビなどの接続まで行うか
- 簡易組み立て:ベッドやテーブルなど分解式家具の組み立てに対応しているか
- レイアウト変更対応:設置後に位置調整をお願いできるか
家具設置を「搬入まで」としている業者も多いため、どの段階までが“サービスに含まれるのか”を必ず確認しておきましょう。
梱包資材・回収サービスの有無
見落とされやすいのが、資材関連のサービス範囲です。
- ダンボールやテープの支給数
- ハンガーボックス・食器専用ケースなどの貸出
- 引越し後のダンボール回収
- 無料か有料か、回収のタイミングはいつか
「資材は別途購入」「回収は自分で処分」といったケースもあり、契約前に確認しておくことでコストを正確に把握できます。
【サービス範囲を明確化するチェックポイント】
見積もりや契約の際は、以下のポイントを必ず確認しておくと安心です。
- 荷造り・荷解きの対象範囲はどこまでか
- 家具・家電の搬入・設置・組み立てが含まれるか
- 梱包資材・ダンボールの支給・回収の条件
- 養生・階段作業・長距離運搬の追加費用有無
- 除外品(貴重品・動植物・精密機器など)の扱い
- 契約書や見積書に具体的な作業項目が明記されているか
- 損害補償・保険の範囲が明示されているか
追加料金の発生条件(大型家電・特殊荷物・距離など)
引越しの見積もりは「基本料金」で示されることが多いものの、実際には状況に応じて追加料金が発生することがあります。
特に「大型家電」「特殊荷物」「運搬距離」「作業環境」などは、標準作業の範囲を超えるため、見積もり後に追加費用がかかる代表的な要因です。
ここでは、フルサービスでも注意が必要な“追加料金の発生条件”を詳しく解説します。
大型家電・大型家具の取り扱いによる追加費用
大型の家電・家具は搬出・搬入に手間がかかるため、標準料金に含まれない場合があります。
冷蔵庫(大型・4ドア以上)/洗濯機(ドラム式)/ピアノ/マッサージチェア/ベッド/タンス/大型テレビなど
- 追加費用が発生するケース
- 通常搬出ができず「吊り上げ・吊り下げ作業」が必要な場合
- 階段や狭い通路を通せないために「分解・再組立て」が必要な場合
- 家電設置・配線・アンテナ接続などの専門作業が発生する場合
- ピアノや金庫など、重量物専門スタッフの対応が必要な場合 - 目安金額
1点あたり3,000〜10,000円前後が一般的。重量物や吊り作業があるとさらに高額になります。
特殊荷物・特別取り扱い品の追加費用
通常の家財とは異なる扱いが必要な荷物には、別途料金が発生します。
- ピアノ・電子ピアノ(専門業者の搬送)
- バイク・自転車(大型サイズや分解必要な場合)
- 水槽・観葉植物・ペット関連用品
- 美術品・骨董品・精密機器
- アウトドア用品(カヌー・スキー板・サーフボードなど)
- 追加料金の理由
破損リスクが高く、特別な梱包・専用車両・専門スタッフが必要になるため。
【注意点】
申告漏れがあると、当日対応できない・再訪問になるなどのトラブルに発展する可能性があります。
運搬距離・移動ルートによる追加費用
引越し先が遠い・アクセスが悪い場合も料金が上がる要因になります。
- 距離による加算
- 同一市内よりも県をまたぐ長距離引越しでは、輸送距離(km)単位で追加料金が発生。
- 長距離の場合は「高速代」「燃料費」も別途計上されるケースが多い。 - 運搬環境による加算
- トラックを建物前に停められず、離れた場所から運ぶ場合(=横持ち作業)
- 階段のみでの搬出入(エレベーターなし)
- 狭小住宅・傾斜地などでの作業難度が高い場合 - 目安金額
距離・環境次第だが、追加3,000〜20,000円程度が一般的。
時間帯・日程による追加費用
引越しのタイミングも料金に大きく影響します。
- 時間帯による差
- 早朝・夜間作業(通常営業時間外)は割増料金の対象になることがある。
- 午後便・混載便を選ぶと安くなる場合もある。 - 日程による差
- 繁忙期(3〜4月)は通常期よりも20〜50%ほど高く設定されることが多い。
- 土日祝日は平日より割増になるケースも多い。
梱包・資材・サービスオプションによる追加費用
フルサービスでも、特定の資材や作業を追加した場合に費用が発生します。
- 代表的な追加項目
- ダンボールの追加支給
- ハンガーボックス・布団袋などの貸出超過
- 荷物の一時保管(トランクルーム利用)
- 不用品処分・リサイクル回収
- ハウスクリーニング・エアコン脱着
- 損害補償の特約加入
【注意点】
フルプランでも、これらのオプションは含まれていない場合があるため、「どこまでが基本料金か」を見積もり段階で必ず確認しましょう。
当日トラブル・追加作業による費用発生
現場で予期せぬ状況が発生した場合にも、追加費用が生じることがあります。
- 荷物が見積もりより多かった
- 梱包が未完了でスタッフが追加作業を行った
- 駐車スペースが確保されておらず、遠距離搬送が発生
- 養生対象箇所が増えた・特殊作業が必要になった
- 対策
見積もり時に「荷物量」「建物条件」「搬入経路」を正確に伝えること。
また、当日作業前に「追加料金が発生する場合の金額と理由」をその場で確認しましょう。
【確認すべきポイント】
追加料金を防ぐためには、以下の点を契約前に明確にしておくことが重要です。
- 大型家具・家電・特殊品が基本料金に含まれるか
- 吊り作業・階段作業・長距離運搬の追加料金基準
- 資材の追加支給・貸出超過の扱い
- 時間帯・曜日・繁忙期による割増設定
- 現場での追加作業が必要になった場合の対応方法
- 契約書や見積書に「追加費用条件」が明文化されているか
梱包資材の有無と料金
引越しの見積もりで見落とされがちなのが「梱包資材に関する費用」です。
ダンボールやテープは当然付いてくると思いがちですが、実際には業者やプランによって“無料で支給される場合”と“別途料金がかかる場合”が存在します。
フルサービスであっても資材の範囲や枚数に制限があることが多く、契約前に確認しておかないと後で追加費用が発生するケースもあります。ここでは、梱包資材の有無と料金の実態を詳しく解説します。
梱包資材に含まれる主なアイテム
引越しで使用される梱包資材には、次のようなものがあります。
- ダンボール(大小サイズ)
- ガムテープ・クラフトテープ
- 緩衝材(プチプチ、新聞紙、包装紙など)
- 布団袋・布団カバー
- ハンガーボックス(衣類を掛けたまま運べるケース)
- 食器専用ケース・割れ物用クッション材
- ラップ・保護シート・カバー類
これらは「標準的なサービス内容」に含まれることもあれば、オプション扱いになることもあります。
多くの引越し業者では、基本プランやフルサービスプランに一定量の資材が含まれています。
- 契約時に「ダンボール○枚まで無料提供」という上限を設けているケース
- ガムテープや布団袋をサービスとして付ける業者もある
- ハンガーボックスや食器専用ケースなど、当日貸出のみ無料のケースも存在
- 不要になったダンボールを後日回収してくれる(無料または指定枚数まで無料)
ただし、無料の範囲を超えた場合や、特別サイズの資材を追加で希望する場合には、別途料金が発生します。
一方で、資材が無料で支給されない、もしくは制限を超えると有料になる場合もあります。
- ダンボールが規定枚数を超えた場合(追加1枚あたり200〜400円程度)
- ハンガーボックスや布団袋を追加で借りる・購入する場合
- 緩衝材・包装紙などを多めに使う場合
- 使用済み資材の回収を有料オプションとしている業者(例:3,000円前後)
- 資材をセットで購入する場合(例:ダンボール+テープ+布団袋=約4,000円前後)
業者によっては「資材費は見積もり外」となっており、後で別請求されるケースもあります。
資材費の具体的な目安
市販または業者販売の平均的な価格帯は以下の通りです。
- ダンボール(大)10枚セット:約3,000〜3,500円
- ダンボール(中)10枚セット:約2,500〜3,000円
- ガムテープ1本:約300円前後
- 布団袋1枚:約500〜800円
- 食器用包装紙1セット:約2,000円前後
- 緩衝材(プチプチロール):約1,000〜1,500円
フルサービスの場合でも、上限を超えた分や特殊資材の使用には上記のような追加費用が発生することがあります。
資材回収サービスの扱い
梱包資材の「回収サービス」も業者ごとに異なります。
- ダンボール回収が無料(引越し後1回限りなど条件付き)
- 指定回収日や持ち込み限定など、制約付きのケース
- 有料回収(3,000〜5,000円程度)を設定している業者も存在
- 一部地域では、自治体のゴミ収集として処分が可能な場合もある
フルサービスを選んでも回収が含まれないことがあるため、見積もり時に必ず確認が必要です。
【契約前に確認すべきチェックポイント】
資材関連でトラブルを防ぐためには、次の点を事前に確認しておきましょう。
- 無料で提供される資材の種類・枚数・サイズ
- 無料提供を超えた際の追加料金の単価
- 特殊資材(ハンガーボックス・食器ケースなど)の扱い
- 資材回収サービスの有無・費用・条件
- 見積書に資材費が含まれているかどうか
- 自前で資材を用意しても問題ないか
ダンボールの回収や清掃サービスの有無
引越しが終わったあとに残る大量のダンボールや、旧居・新居の掃除は意外と大変です。フルサービスの引越しプランでも、「ダンボール回収」「清掃サービス」がどこまで含まれているかは業者によって異なります。
これらのサービスを事前に確認しておくことで、引越し後の後片付けをスムーズに進められ、不要な出費も防ぐことができます。ここでは、ダンボール回収と清掃サービスの実態を詳しく解説します。
ダンボール回収サービスの内容
引越し後に不要となるダンボールを回収してくれるサービスは、多くの業者で「オプション」または「条件付き無料」として提供されています。
- 無料回収:
引越し後1回のみ、一定枚数まで無料で回収してくれる業者が多い。
例:引越し後3か月以内・自社ダンボールのみ対象などの条件付き。 - 有料回収:
1回あたり3,000〜3,500円程度の費用が発生するケースが一般的。
繁忙期(3〜4月)は対応不可の期間を設ける業者もある。
- 自宅まで回収に来る(指定日時)
- 新居付近の営業所に持ち込みで引き取る
- 自治体の資源回収で自分で処分する(無料だが手間がかかる)
このように、回収は「無料で自動的に行われる」とは限らないため、引越し契約時に有無を確認しておくことが大切です。
【ダンボール回収の注意点】
ダンボール回収サービスを利用する際には、次の点にも注意が必要です。
- 回収対象は「業者が支給した箱のみ」の場合が多い
- 自前で用意したダンボールは対象外のことがある
- 回収期限がある(多くは引越し後1〜3か月以内)
- 汚れ・破損が激しいものは回収を断られることもある
- 回収回数は原則1回のみ(追加回収は別料金)
事前に「何枚まで・いつまで・どの方法で回収してもらえるか」を明確にしておきましょう。
清掃サービスの内容
引越し後の「清掃サービス」は、フルサービスプランでも含まれていないことが多く、別料金のオプションとして提供されています。
- 対象範囲
- 旧居の掃除(退去前の原状回復を目的とした清掃)
- 新居の入居前クリーニング(ほこり・水回りの除菌など)
- キッチンや浴室の水垢・油汚れ除去
- トイレ・洗面台のクリーニング
- フローリング・窓・サッシの拭き上げ
- 家具設置後の軽清掃(ホコリ除去や簡易拭き掃除)
- 費用の目安
2LDK〜3DK程度でおよそ5万円〜7万円前後が相場。
旧居・新居の両方を依頼する場合は10万円を超えることもある。
【清掃サービスの注意点】
清掃サービスを利用する際には、内容と範囲を明確にしておくことが重要です。
- 清掃対象が旧居か新居かを確認(どちらか片方のみ対応の業者もある)
- 床・壁・水回りなど、清掃範囲が明記されているかをチェック
- エアコン分解清掃やワックスがけは別料金になることが多い
- 清掃当日の立ち会いが必要か、鍵の預け方はどうするかを確認
- 引越しと同日作業が可能か、それとも別日になるかを確認
【契約時に確認すべきポイント】
ダンボール回収・清掃サービスに関して契約前に必ず確認しておくべき項目は以下の通りです。
- ダンボール回収は無料か有料か
- 回収回数・対象枚数・期限の有無
- 清掃サービスがプランに含まれているか、別料金か
- 清掃の範囲と対象(旧居・新居・両方)
- 清掃業者が引越し業者の提携先か、別途手配が必要か
補償・保険の範囲(破損・紛失時の対応)
引越しでは、どんなに慎重に作業しても「家具の傷」「家電の破損」「荷物の紛失」といったトラブルが起こる可能性があります。
こうした損害に備えるのが「補償・保険制度」です。ただし、補償範囲や条件は業者によって異なり、「どこまで補償されるのか」を理解していないと、いざという時に泣き寝入りすることにもなりかねません。
ここでは、引越し時の補償・保険の基本構造と、破損・紛失時の対応方法を詳しく解説します。
引越し業者が加入している保険の基本構造
引越し業者の多くは「運送業者貨物賠償責任保険(貨物保険)」に加入しています。これは、引越し作業中に業者側の過失によって荷物が破損・紛失した場合に補償が行われる保険です。
- 対象となる損害
- 家具・家電・日用品などの破損・紛失
- 搬出・搬入時の落下や衝撃による損傷
- 作業員の誤操作による破壊・汚損 - 補償の上限
保険金額は業者ごとに異なるが、一般的には「1事故あたり最大100万〜300万円程度」が目安。
ただし高額品(絵画・骨董・貴金属など)は、事前申告していないと補償対象外となることがあります。
補償対象外となるケース
全ての損害が補償されるわけではありません。以下のようなケースは、多くの業者で「補償対象外」とされています。
- 荷造りを依頼者本人が行い、その中で破損した場合
- 貴重品(現金・通帳・宝石・印鑑など)の紛失
- 植物・生き物・食品など特殊品の損傷
- 自然災害(地震・台風・洪水など)による被害
- 運搬前から既に破損していた・経年劣化していたもの
- 引越し後に長期間経ってから申告された損害
補償対象外になると、保険ではなく自己負担扱いになるため、申告や梱包時点での確認が非常に重要です。
家具・家電の破損時の対応手順
もし引越し後に「家具が傷ついている」「家電が動かない」といったトラブルが発覚した場合、次のような手順で対応します。
- 発見後すぐに業者へ連絡する
引越し完了からできるだけ早く(理想は24時間以内)連絡することが重要です。
時間が経過すると、因果関係が不明確になり、補償が受けにくくなります。 - 状況を写真で記録する
破損箇所・設置状況・搬入経路などを撮影して証拠を残しておく。 - 業者が現物確認・報告書を作成
担当者が訪問して確認し、「破損・紛失報告書」を作成する。 - 修理・弁償・保険対応の提案を受ける
修理業者の手配や、代替品・現金での補償などの方法が提示されます。 - 納得できない場合は書面で交渉
業者が誠実に対応しない場合は、「全国引越専門協同組合連合会」などに相談可能です。
紛失トラブル時の対応
荷物が見つからない・数量が合わないといった場合も、同様に迅速な対応が必要です。
- 荷物受け取り時に「作業員立会いで個数確認」を行うことが基本。
- 紛失が発覚した場合は、搬出リスト・控え伝票・写真などを基に調査が行われる。
- 業者の管理下で紛失が確認された場合は、保険適用による弁償対象になる。
- 紛失原因が「依頼者側の梱包忘れ」「同梱ミス」である場合は補償されません。
壁・床・建物への損傷補償
家具・家電のほか、建物そのものに傷がつくケースもあります。
搬入・搬出中に壁・床・ドアなどを損傷させた場合は業者責任として修繕対応が行われる。
旧居での経年劣化や、依頼者自身がぶつけてできた傷は補償対象外。
- 補償方法
修繕業者による修理または修繕費の支払いで対応される。
保険と補償の違い
引越しにおける「保険」と「補償」は似ていますが、厳密には異なります。
- 保険:業者が加入している損害保険で、保険会社が賠償を行う仕組み。
- 補償:業者が自社規定に基づいて修理や弁償を行うケース。
→ 小規模な破損や軽度の損傷では、保険を使わずに業者負担で対応することもあります。
【依頼前に確認すべきチェックポイント】
契約・見積もりの段階で、次の項目を必ず確認しておくことが重要です。
- どの保険に加入しているか(貨物賠償責任保険など)
- 保険金の上限額と自己負担の有無
- 高額品や貴重品を運搬する際の申告方法
- 補償対象外となる条件(自分で梱包・自然災害・経年劣化など)
- 破損・紛失時の申告期限(一般的には引越し完了後7日以内)
- 修理・弁償・保険請求の手続き方法
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